例年以上の激化が予想されている2023年度中学入試。いよいよ各所で出願が始まる中、6年生保護者様は出願校の最終検討と調整を進めていらっしゃることと思います。
そのご参考のひとつとしていただけるよう、期間限定企画「探究型入試紹介」の連載を始めました。
入試広報担当の先生や探究を担当されている先生方に直接お話をうかがい、入試の特長や出題の意図、事前準備があまりできていなくても受験できる…?などの気になるポイントをうかがうとともに、その入試が入学後の学びとどのような関係があるのかについてもお話を聞いていきます。
第6回目となる今回は、神田女学園中学校(東京都千代田区)です。2023年2月4日(土) PMに実施される「新思考力型入試」についてお聞きしました。なお、文末には試験の概要もまとめておきましたので、最後までお読みいただければ幸いです。
このシリーズの連載記事は、当サイト「オンライン合同学校説明会」のほか、年明けの2023年1月6日(金)以降、順次新サイトにも掲載していきます。(新サイトの掲載先は決定次第こちらに記載いたします)
Contents
インタビュー① 新思考力型入試とその成果
検索力が伸びただけの「探究」では意味がない
――新思考力型入試は過去問が公開されていないとのことですが…どのような試験なのでしょうか。
神田女学園中学校高等学校
入試広報ご担当の先生(以下、神田女学園):
(2022年)12月18日に開催しました「出題傾向解説会」の動画をご覧いただくと、少しヒントになると思います。
基本的には、写真や図表、リード文などの与えられた条件を使って試行錯誤し、自分の考えをを文章で表現する試験であるとお考えください。
――動画では例題として「普段の生活の中で『紙』を使うことで代用できるものを1つ考え、そのメリットとデメリットを答えなさい」というものが挙げられていました。
神田女学園:
はい。これは入試体験会でもお出ししている内容です。
新思考力型入試をひとことで申し上げるならば「手元で何かをいじって、課題に対して解決するものを考える」入試ですので。
――「メリットとデメリットを答えなさい」としている意図についてお教えいただけますか?
神田女学園:
探究って、まだまだ「調べ学習」と混同されがちですよね。「調べてみたらこうでした」で終わってしまったり、探究のレベルというより調べる力――もっと言えば「検索力」が伸びただけで終わってしまったり。でも、本校はそういう探究では意味がないと思っています。
メリットとデメリットの両方を指摘してもらうのは、私達のそのような考え方のあらわれです。受験生さんは――当然ですが――自分が持ってきた資料や考え方は「良いもの」だと考えて出してくるわけですが、そこであえて「他の人がそれを見た時にどう感じるか」を考えることで、単なる調べ学習と発表ではなくなっていくと思います。
――自分の文章を客観視するのは論理的思考の第一歩ですね!
プライベートでも「まずは仮説を立てる」が習慣に
――新思考力型入試を導入した意図についてお話いただけますか?
神田女学園:
端的に言えば、「入学後の学びを楽しみにしてもらいたいから」です。
本校では中1から探究に取り組みます。そしてそのテーマはオールフリー、つまり自由なんです。そのテーマが最終的に社会にどう貢献できるかは念頭に置いてもらいたいと思いますが、それ以外にテーマの制約はありません。好きなことを探究するからこそ興味を持って、深く学ぶことができます。
2科・4科の入試はどうしても「習ってきたことをどれだけ出せるか」になってしまうのですが、新思考力型入試には正解などありませんので、自分で考えたことを自信をもって出す機会となります。入試でのこの体験を「おもしろいな」と思い、手ごたえを感じて入学し、入学後の探究に続いていく。そんな体験をしていただければと願っています。
――新思考力型入試を導入して5年。1期生さんはもう高校2年生ですね。どんな生徒さんが多いですか?
神田女学園:
色々なことを考えるのが好きな子が多いですね。あれもこれもやってみたい、考えてみたいと思っている子が入試を受けて、入学して。その後5年が経っても相変わらず色々なことをやっている、そんな感じです。学校生活の中でも「先生、これやってみたらどうですか?」と提案してくれたり、探究でも「今、このテーマをやっているんですけどこっちもやっていいですか?」とか。
――そういった生徒さんが増えたこと、そして探究的な学びに力をいれてきたことで神田女学園さんの雰囲気が変わってきた実感はありますか?
神田女学園:
そうですね、それはすごくあります。
本校の生徒たちは今、授業だけではなく私生活でも「まずは考える」ようになっていて。検索で調べたらすぐに答えが出てくるようなものでも、調べないで先に一度、自分で考える。「もしかしたらこれはこうなのかな?」と仮説を立てて、調べるのはそのあと。自分の仮説が合っているかを検証するために調べるという、そんな感じの動きをよく見かけます。
――まずは仮説を立てる。
神田女学園:
そうなんです。先日、生徒同士で恋愛の話をしている時にまで仮説を立てているのを目撃しました(笑)。常に考えるようになっている印象がありますね。
インタビュー② 入学後の学び・探究とどうつながるか
「なんでちゃん」を積極的に育てていく授業
――常に考える姿勢があれば、普段の授業への参加態度も積極的になりそうですね。
神田女学園:
まさにそうなんです。ここ2、3年で授業の雰囲気が大きく変わりました。
――生徒さんはどんなふうに変わってきたのですか?
神田女学園:
数年前は、数学の授業の時に「この公式はこうだよ」と教えたら「じゃあそれを覚えればいいんですね」という反応だったんです。でも今は「その公式はどこから出てきたんですか?」「考えたのは誰ですか?」「世の中ではどんなところで使われているんですか?」と、疑問がどんどん出てきますし、生徒達がそれを実際に口にします。我々教員はこれを「なんでちゃん」と呼んでいます(笑)。
――先生方もそれを歓迎しておられる。
神田女学園:
もちろんです!探究では自分で疑問を持ち、解決する行動を奨励しているのですから、これを普段の授業でも取り入れて行こうと。生徒たちには、(授業時間)50分のなかで自分なりに疑問を持ってほしいと思っています。
――授業中の生徒さんは楽しいでしょうね!
神田女学園:
ええ。我々教員は緊張の連続ですが(笑)。
――確かに。先生方は気が抜けないですよね。
神田女学園:
なにしろ、何が出てくるかわかりませんから(笑)。私は数学を教えているのですが、先日は生徒から「国語で習ったこの文章を数式で表せますか?」と聞かれました。国語科の教員と話し合ってなんとか形にしましたが、冷や汗をかきましたね(笑)。
でも生徒たちも、我々にただ投げっぱなしということではないんです。たとえば三角関数であればsin(サイン)・cos(コサイン)・tan(タンジェント)は世の中のどこで使われているか?に疑問を持ったら、私たちに質問するだけでなく、自分達でも考え、調べます。教員が知らないレベルまで調べ上げてしまうこともよくありますよ。
――生徒さんが学びを主導していくのですね。
神田女学園:
それこそが私たちの理想とする形です。本校では5年ほど前から教員が教える「教員主体」ではなく、生徒が主体であることをテーマにする形に変わりました。我々が教えて動かすのではなく、生徒が動く方向に対してサポートをする教育方針です。
――授業時間以外でも質問されることはよくありますか?
神田女学園:
あります、あります。本校はもともと教員と生徒の距離が近いんです。何でも聞ける距離にあって、プライベートな話をすることもよくありました。
5年ぐらい前からはその話の内容がプライベートから勉強の話題に変わってきて。同じころから入学する層も、我々の授業スタイルも変わってきました。
探究的な学びが深まるにつれて、授業も、生徒とのコミュニケーションも、学校内の雰囲気も変わってきたのです。
――教育内容説明会で「楽しくなければ学校ではない!楽しいだけでも学校ではない!」というお話がありましたが、まさにその実現ができる環境になってきたのですね。
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