三田国際学園中学校・高等学校 大橋学園長のお話・穴埋め式まとめノート

この記事は、文化放送PodcastQRで毎週月曜日に配信されている「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」の内容を、確認クイズ付きでWeb再録したものです。

配信内容の主要部分を書き起こすとともに、その一部を「穴埋め(ブルダウン式の三択)」クイズにしております。

番組を聴きながら穴埋めを完成させて、楽しみながら学校への理解を深めていただければ幸いです。

今回お届けするのは、
三田国際学園中学校・高等学校(東京都世田谷区)の学園長である大橋 清貫先生のお話です。


番組の聴取は下記より↓↓

【大切なお願い】

※このWeb再録は、「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」をより楽しんでいただくための取り組みとして、文化放送様の許諾をいただいて実施している特別企画です。

クイズを楽しんでいただいたあとは、ぜひページ末尾のアンケートフォームから、番組のご感想やリクエストなどをお送りください。

この企画を続けていくことができるかは皆さまのお力にかかっております。ご協力、どうぞお願いいたします!

※本テキストの著作権は、株式会社文化放送に帰属します。本テキストの一部または全部を無断で複写・複製することは法律で禁じられております。

Topics1:教育理念

「発想の自由人たれ」

おおたとしまさ氏(以下、おおた):
それでは、三田国際学園中学校・高等学校の学園長、大橋 清貫先生にお話をうかがっていきましょう。大橋先生、よろしくお願いします


三田国際学園中学校・高等学校
大橋 清貫
学園長(以下、大橋):
よろしくお願いします。

おおた:
三田国際という学校は、場所としては三田にあるわけではないんですよね。
どんなエリアにあるんでしたっけ?

大橋
三田国際の一番最初の前身の学校は「三田高等女学校」で、今の港区の三田にありました。高等女学校が――そういう制度自体がなくなって、その後、建学者が戸板関子なので「戸板女子中高」になりまして、そして、100年を超える伝統校なのですが新しい時代に対応した教育をするということで、三田高等女学校の建学の地、三田を再び(名称に)使いまして、国際教育をしていく学校なんだというところで「三田国際学園」というふうに、共学にして校名もあわせて変更になりました。

おおた:
それが2015年でしたっけ。
今の立地、アクセス、最寄り駅はどちらになりますか?

大橋:
東急の用賀駅です。(中略)駅から歩いて5分ぐらいのところ、閑静な住宅地にあります。

おおた:
そういった三田国際学園さんですが、先生からご覧になって、現在の三田国際中高はどんな学校だというふうにお考えですか?

大橋:
学校に一歩足を踏み入れていただきますと、ほとんどの方が同じ印象を受けられるのですが、生徒がとにかく元気がいい。もちろん体を動かすという元気もありますが、ものすごく活発に自分の意見を言うというところ、伝えあうというところの「元気」「活気」がある学校だと思います。考えることが常態化している子どもたちが集まっている学校になったな、そんな校風を感じますね。

おおた:
(1)ことが常態化されていて、自分で考えたこと・意見をどんどん表に出していくことができる、そういう雰囲気の学校になっているということでしょうか。

大橋:
そうですね。まず、かなり時代を意識した教育をさせていただいていますので、生徒たちには常に自分の考えを持つことがずっと入学時から求められていて。それはマスト感でやるのではなくて、楽しく自分の考えをもって、それを伝えあう。最終的にはプレゼンテーションのような形で発表していくことに非常に慣れている、そういう雰囲気があふれる学校かなと思います。

おおた:
先ほど「時代を意識した」というキーワードがあって、時代を意識しているからこそ自分の意見をしっかり持って…という文脈だったかと思うのですが、「今の時代だからこそ自分の意見を持たなければいけない」という、これをどういうふうに解釈したらよろしいでしょうか?

大橋:
もちろん教科書のこと・教えられたことをしっかり理解できるという能力はもちろん第一義的には大事だと思うんですね。その上でさまざまなことに対して自分の考えが求められるので、それに対して「やってないからわからない」とか「習っていない」とかそういうことではなくて、自分の考えを、このことについてはこうなんだということをいつも持ち続けることができるそういう人を時代が求めているのではないかなと。

グローバル時代で非常にテクノロジーの進化が激しい中にあって、子ども達がこの時代で活躍する日はそう遠くないわけですが、その時にそれだけの十分な自分の能力を磨いておくそういう準備をしている学校かなと思います。

おおた:
テクノロジーが急速に進歩していて、今の時代は、何か用意されている答えではなく自分自身の中から自分の考えを持つことが求められている時代なのだという時代認識において、そういう時代に活躍できる人たちになるための教育を行なっているということですね。

もともと教育理念とか学校のスローガン的なものって何かございますか?

大橋:
そうですね。この学校の生徒は皆、「発想の自由人」と言うんです。発想の自由を手に入れた人たちという意味なのですが。自分はそういう人間になりたい、そういうことで私もいつも「発想の自由人たれ」と(言っています)。

おおた:
それはいい表現ですね。

大橋:
発想力というのをすごく重視していまして、学校全体がこの時代に活躍できる人材ということでさまざまなリテラシーを強める、活躍できる人のある種の要件・コンピテンシーを鍛えていく学校であるという認識に、生徒自身がほぼ皆なっていると思うんですね。

特にサイエンスリテラシー、コミュニケーションリテラシーについては、中1の入学の時の合宿からずっとそこを鍛えていく、このスタイルを取り続けている学校ですので、相当なリテラシーが、ITにしてもコミュニケ―ションにしてもできていまして。数理サイエンスも相当リテラシーは高いですね。

おおた:
サイエンスのリテラシーとコミュニケーションのリテラシー。サイエンスとは要するに物を見る目の解像度ということかなと思います。コミュニケーションというのはそれをもとにして、先ほどおっしゃられたような「醸成された自分の意見」を交換して相互の中で発展させていくというそういう意味合いでしょうか

大橋:
その通りですね。

おおた:
コンピテンシーという言葉が出てきまして、もしかしてリスナーの方々の中にはなかなかなじみのない言葉かと思います。これはどのような意味で使っておられるのか伺ってもよいですか?

大橋
成功する人たちにある種共通する資質や能力、活躍する人たちに備わっている資質を「コンピテンシー」と呼んでいるようです。それは大学や社会に出てから鍛えられる、あるいは備わるものだという理解ではなくて、中高時代にその基礎をつくっておくというのが三田国際学園の考え方で。

学校教員全体がコンピテンシーを鍛えていく学校なんだということで、「12のコンピテンシー」を目標に掲げていまして、そのひとつがコミュニケーションだったりサイエンスだったり。そんなことをやっています。

おおた:
ありがとうございます。コンピテンシーはもともとの語源で言えばCompete(競争する)という動詞を名詞化したものだと思いますが、これはOECDの文書の中にも出てくるキーワードでもありますよね。

<確認クイズ>
(1)に当てはまる言葉は何でしょう?

テスト

Topics2:歴史

「知・好・楽」が「発想の自由人たれ」の原点

おおた:
そのような時代感に基づいてこれからの時代の中で活躍していけるコンピテンシーを身に付けた人たちを育てる学校なのだという非常に明確な目的やメッセージを持った学校に今、なっていると。そして生徒さんたちは皆さん活発に自分の意見を言うことができるという雰囲気になっているということなのですが、そういった校風はどのような経緯で作られてきたのでしょうか?先ほど創立者のお名前もちらっと出てきましたが、改めて歴史など振り返りながら御校の生い立ちを教えていただければと思うのですが。

大橋:
(本校は)100年を超える伝統校で三田高等女学校がそのルーツなのですが、創立者が戸板関子という先生で、学校法人戸板学園というのはそこから来ています。その戸板学園の中に三田高等女学校が入っていて、それが今日の三田国際学園のルールになっています。

おおた:
戸板関子というのはどういった方だったのでしょうか?

大橋:
「知・好・楽」(ち・こう・らく)という教えを当時の生徒さんたちに。知ること、好きになること、そして楽しむことは素晴らしいんだと教えの中に入れていった方です。(中略)戸板学園のルーツになっている建学者の教えで、(これを)今の時代に反映して三田国際学園の「発想を楽しむ」「発想の自由人たれ」というのはそこから来ているのです。

おおた:
なるほど、そこからの進化、大橋先生が考えられた新しいフレーズなのですね。(中略)戸板関子さんはもともと何をされていた方なのですか?

大橋:

三田高等女学校のそのまた前に戸板裁縫学校がありました。女子校には割とよくありますが、そういったことをやっていて、そしてさらに女性の高等教育に熱心に取り組んで、それで裁縫学校の次に三田高等女学校(を立ち上げた)ということで、女子教育のある種のパイオニアだった方ではないかなと。
(中略)
三田高等女学校も三田、戸板女子中高の時も三田、1993年にこの用賀の地に戸板女子中高が引っ越したんです。この用賀の地で中等教育、中高6年間の女子教育を続けました。

おおた:
そして2015年に共学化とともに三田の名前が復活して。その時に先生が学園長になられて。だからもう7年経つということでしょうか。

大橋:
準備を2年間やりましたので、9年経ちました。(中略)この間卒業した生徒が中学2期生。今、中学の1期生と2期生が卒業しました。

おおた:
ひとまわりして、新しい体制での卒業生が出始めているということですね。

Topics3:学校として力を入れていること

英語の次は「数理・サイエンスの学校」へ

大橋:
実は先ほどサイエンスリテラシー、数学に力を入れていると申し上げましたが、三田国際学園は英語に非常に強い学校といわれていて、実際、ものすごく生徒の英語力が高いなと思っています。

その背景のひとつに、帰国子女(国際生と呼んでいます)がとても多い学校だということがあります。1学年のうち、少ない学年でも30人ぐらい。学則定員(がくそくていいん)は188人、それが学年によって多少でこぼこはあるのですが、その中で国際生(主に帰国子女)が30人から、多い学年だと80人います。

おおた:
80人ですか!

大橋:
学校に1300人ほど生徒さんがいるのですが、その中の三百数十人が国際生(主に帰国子女)です。

おおた:
(中略)ということは4人に1人以上。

大橋:
ですから生徒全体がその影響を受けて、生徒全体のブレークスルーがかなり早くて。英語のネイティブスピーカーの専任の先生が29人いるんです。教員の3人に1人がネイティブスピーカーですので、学園全体の英語環境がすごく高いので、英語に強い学校という――実際強いのですが。

学園が今すごく力を入れているのが「数理・サイエンスの学校」で、数学と理科の専任教員は27人います。生徒の進路もだいぶ理科系にドライブがかかってきまして、英語がとても得意なサイエンティストが多いんじゃないかなという感じです。

おおた:
順番としては、国際という名前もついている通り、英語に強いよという帰国生もたくさんいて、という文化がひとつできていましたと。そこでだいぶ英語に関する成果も出てきたし文化としてできてきているので、数理サイエンスのほうにもう少し力を入れてみようという段階を経て、そういうふうにすでになってきていると。

大橋:

そうですね。いつもそう思うんですが 環境を整備すると子どもたちはもう、こちらの想定以上の色々な成長をしてくれまして。英語もそうだったのですが、ここまで理数に強くなる学校だとは、ある程度(は思いましたが)それ以上で。驚きました。

おおた:
それについて二つ質問があるのですが。ひとつは、環境を整備するといった時に、理数に強くなる環境を整備されたというのはどういうことなのかということと、(二点目は)「こんなにも成果が出るのか」というのはどのあたりで感じられたのかということを(おうかがいしたいです)。

大橋:
環境については、理数の先生は――相当腕っこきで力のある先生をとることができました――27人の専任がいますので――これからもっと増えますけれども――その27人の先生と。あとはサイエンスラボが3つあり(物理・化学・生物)そこに、なかなか中高生では手が出ないような機材をそろえてそれを使えるという環境を与えることによって、生徒がサイエンティストになる。

研究者の作法を教員から教えてもらえますので、作法を学んで「研究とは何か」がわかったあと、この学園で「考えろ」という教育を受けている中で、生徒が「私はサイエンティストになっているな」と思っていると思います。

その結果が、色々なところのコンテストというのでしょうか、学会とかにデビューしているようで。色々なところで思いもかけないような賞をいただいてきて、いったいこの子たちはどこでいつエントリーしていたんだろう?とかこんな研究をいつやっていたのだろう?とこちらが驚くことが多いですね。

おおた:
なるほど、ありがとうございます。よくわかりました。

Topics4:保護者様へのアドバイス

考えるのは生徒。だから教えない

おおた:
名前を変えて共学化した当初から英語教育も力を入れていることは存じ上げていたのですが、さらにそこに数理サイエンスというひとつの新たな特技といいますか武器といいますかそういったものも加わって、英語に強いそして理数系にも強いという学校になってきているということなのですが、まさに最初におっしゃっていた「今の時代をとらえた教育を行う学校なんだ」と自負をされている。

そういた三田国際学園の教育的な思想、エッセンスを何か一般のご家庭のなかで取り入れるヒントみたいなものをいただければと思うのですが、いかがでしょうか。

大橋:
非常に抽象的な話かもしれませんが、先生という職業の人はだいたい教えるのが得意だし好きなんですね。それを「教えるな」というのはかなり酷な話なのですが、(それでも私は本校では)「生徒が考えるようにしてくれ」と。生徒が振り向いた時に・尋ねられた時に先生の力を発揮して欲しいというお願いをしています。

それはご家庭でもそうあって欲しいなと思っています。まずは自由に考えさせるとか、好きなことをやらせてみるとか。そうするとどんどんのめりこんでいってくれますので、そこでアドバイスが必要な時に力を貸していただけたら素敵だなと今も思っています。

おおた:
ついつい先回りをして「ああしなさい」「こうしたほうがいいわよ」というアドバイスをするというより、そこでちょっと気持ちをおさえて、子どもが自発的に動いているものを見守って。そして(お子さんが)困った時にふっと親の方を見て「え、どうしたらいいの?」という時に、そこでようやく「それはね…」と。「待ってました!」と気合はあまり見せないように「しょうがないなぁ」なんていいながら(笑)。

大橋:
そうだと思います。それだと楽しいですね。

おおた:
学校の中でもそうやって先生たちが教えたい気持ち――ほとばしっているのでしょうけれども――ちょっとそれを控えめにしながら、生徒さんたちにはまず考えてもらって。そして求められた時に出て行くようにしようね、ということを先生からもメッセージを発せられているわけですね。そういう距離感をご家庭の中でも親が身に付けてといいますか、そういう心構え・身構えでいることが。

でも、「そうは言っても先生、うちの子はスマホばっかりやってるんですけど」とか「漫画ばかり読んでいるんですけど」それでいいんでしょうか?という質問が次に来るのではないかなぁと思うのですが、それに対しては先生、どうお答えになりますか?

大橋:
私もこの8~9年ですごく経験したことは、生徒はひとたび興味関心を持つともう止まらないんですね。色々な子を見てきました。〇〇甲子園で優勝するとか、企業から研究費をもらうぐらい研究が素晴らしいとか、さまざまなところで受賞したりとか。なかには大学の研究室に呼ばれてコラボして 大学の研究室の中に入って研究している子もいますので。

子どもたちは一たび興味を持ってそこが面白いと思い始めれば、もうそこでは親御さんの心配は解消していくのかなと。時々、「(うちの子は)こんなことで大学(受験)大丈夫なんですか?」という話を聞かないではないのですが、それは結果が出ていますから大丈夫ですよと申し上げています。

おおた:
親や大人の視点からすると「そんなことをして何の意味があるの?」「頑張っているのはわかるけど何の意味があるの?」と思ってしまうかもしれないですが、でもやはり、本人が何かに夢中になって追求したというその経験値自体は決して無駄にならないんですよね。

そのもの自体が何か職業や大学進学に直接的につながるかどうかはわかりませんが、でも、何かに一生懸命になって、自分で試行錯誤した経験というのは、また何か別のところに興味が移っていった時に、その経験値がスライドする・流用できるということはきっとあるでしょうからね。

大橋:
そう思いますね。

おおた:
時間を気にせずに、この6年間の一貫教育の中で・ゆとりの中で存分にそういった時間を過ごせるというのもひとつの魅力ですよね。

大橋:
はい。卒業生と卒業の時に話をさせてもらっているのですが、「6年間何が良かった?」と聞くと、みんな同じ(答え)なのですが「自由にやらせてくれた」と。

おおた:
一番大事ですね。

大橋:
ええ。皆さんいい結果が出ていますけれども、あれもこれもなんでも自由にやらせてくれた・背中を押してくれた、それが一番よかったといつも言ってくれていますね。

おおた:
自由というとすごく意味は広いのですが、おそらく、生徒さん達がその学校環境の中で自分たちが自由だったと感じられるというのは、たぶん、豊富に自己決定の機会があったということですよね。

大橋:
まったくその通りです。

おおた:
自己決定をたくさんしているとすごく自己肯定感が高まるし、結果に対しての前向きな意味での責任感がともなって。仮にあまり良くない結果が出たとしても「じゃあ今度はどうしようか」と。それが人から言われたことだとしたら人のせいにしますからね(笑)。 

そういう、学園の中で経験したすべてのことについて、色々なこと、うまくいかなかったこともあったでしょうが、でもそれについても自分の決定のもとでやったことだよという満足感が非常に高いということなんでしょうね。

大橋:
成長実感を持った6年間を過ごしてくれたのかなと思います。

おおた:

そういうことですよね。それはやはり、人から言われて何かできるようになったというよりは、自分で決定して自分で決めたことでこれだけ成長できた、こんなことができるようになった――できるようにならなくてもいいと思うのですが――こんなことで思いきり時間を使うことができて満足できた、その結果が大きな成長につながっているのだろうなと思います。

校長室訪問、今回は三田国際学園中学校・高等学校の学園長・大橋 清貫先生にお話をうかがいました。大橋先生、ありがとうございました。


今回の内容のご感想やコメントなど、ぜひお送りください。
(私たちが責任をもって文化放送さんにお届けします)

こちらのフォームにご入力をお願いいたします↓↓