小学校時代に頑張ったことを評価。考えを言語化する能力を見る試験 ~ 探究型入試紹介④ 中村中学校 ~

例年以上の激化が予想されている2023年度中学入試。いよいよ各所で出願が始まる中、6年生保護者様は出願校の最終検討と調整を進めていらっしゃることと思います。

そのご参考のひとつとしていただけるよう、期間限定企画「探究型入試紹介」の連載を始めました。

入試広報担当の先生や探究を担当されている先生方に直接お話をうかがい、入試の特長や出題の意図、事前準備があまりできていなくても受験できる…?などの気になるポイントをうかがうとともに、その入試が入学後の学びとどのような関係があるのかについてもお話を聞いていきます。

第4回目となる今回は、中村中学校(東京都江東区)です。2023年2月3日(金) AMに実施される「探究プレゼン型入試」についてお聞きしました。なお、文末には試験の概要もまとめておきましたので、最後までお読みいただければ幸いです。

このシリーズの連載記事は、年末年始の間は当サイト「オンライン合同学校説明会」に掲載し、年明けの2023年1月6日(金)をめどに新サイトへと移行します。新サイトの掲載アドレス等が決まりましたら、こちらのページにリンクを残し、新サイトへの誘導リンクを設置いたします。

インタビュー① ポテンシャル入試とその成果

小学校時代の頑張りや成長を言語化する試験

――「ポテンシャル入試」はどのような試験なのでしょうか。

中村中学校・高等学校 
入試広報ご担当の先生(以下、中村):
作文と面接です。面接のなかに小学校時代の活動や活躍をアピールする時間(プレゼン)もあります。

――小学校時代にがんばったことが評価される入試はなかなかないと思います。このような入試を作った背景やねらいについてお話いただけますか?

中村:
受験を決めるタイミングが遅いお子さん ――それこそ一番遅いお子さんだと6年生の秋に受験を決めたというお子さんもいます―― の中には、単に受験勉強をやっている時間が短いだけで、入学後はちゃんと伸びるお子さんもたくさんいます。

習い事だったり、学校だったり、小学校時代に何かを一生懸命やってきた子たちは、勉強にその力を転用すると十分対応できるんですよね。ですので、そういった勉強以外の部分も評価できたら良いのではと思い、8年前にこの「ポテンシャル入試」を立ち上げました。

――作文と面接という入試の形に込めた想いもお聞かせいただけますか?

中村:
本校はプレゼンの機会がすごく多いんです。年間で100本ぐらい余裕で発表します。

――年間100本!

中村:
ええ。書いたり自分の意見を述べたりする機会がとても多くて。ですから、入試でもそういう力がある子をとりたいと思っています。全国大会への出場や入賞といった「結果」だけではなく、「どう頑張ってきたのか」や、自分がそれによって「どう成長したのか」を言語化して発表できれば、それを評価しましょうという形にしています。

――ということは華々しい実績がなくても大丈夫かも…

中村:
大丈夫です。実績がある子も受験していますが、そうではない子たちもたくさんいます。大切なのは、目標へ向かう中で得たものや自分の変化を言葉で表せるかどうかです。

――「言語化」がひとつのキーワードなのですね。そしてこれは入学後も重視されていると。

中村:
そうですね。四六時中それをやっていますから(笑)。本校のポテンシャル入試は「考えを言語化する能力」を見る試験とも言えます。

クイズにフリップに動画…多種多様なアピールタイム

――自分をアピールする方法として、受験者さんはどんな方法を使っているのでしょう?

中村:
ポテンシャル入試では、その場で発表できるものもありますし、教室の空間ではアピールしきれないもの――たとえばサッカーやバレーなどの球技をやっているお子さんなどは、事前に動画を撮って見せてもらってもいいですよ、という形にしています。

アピールする内容は本当に多岐にわたっていて。その場で演じたり動画にとって見せてくれたりの他にも、KP法という紙芝居型の――芸人さんのフリップ芸みたいな感じで説明していく子もいたり。

自分の話をするのではなく、「私はとにかく調べて発表することが好きだから」と、(中村中学校がある)清澄の町をこんなふうにしたら面白いんじゃないかという提案を持ってきてくれた子もいました。

クイズを作ってきて、私たちにクイズを出した子もいました(笑)。

――面接の場で!それはすごいですね。でも楽しそうです。

中村:
はい(笑)。クイズ形式で自分の経歴を発表してくれましたね。

――受験生さんも色々考えてポテンシャル入試に臨まれているのですね。今おっしゃったお子さんたちは皆さん、合格された方々ですか?

中村:
合格しています。

多様性から生まれる化学反応が集団を上げていく

――ポテンシャル入試で合格されたお子さんたちはどんなふうに育っておられますか?

中村:
ポテンシャル入試を受けた時点では勉強が主ではない生活をしていた子たちが多いので、入学時の学力はそう高くないのですが、もともと物事に対して集中する力があるので入学後はぐっと伸びます。

これまでに20人ぐらいポテンシャル入試で入学していますが、学年でもトップ10に入ったり、クラスや部活をまとめたりなど活躍している生徒が多いです。そういう意味では「刺激を与えてくれる」存在だと思っています。

――ポテンシャル入試以外にもさまざまな入試が実施されていると聞きました。そのねらいは?

中村:
私たちとしては「個」を伸ばすというよりも、個が集まった「集団」を上げていきたい、伸ばしていきたいという想いがあります。ですから、色々な経歴や価値観を持つ子、得意が異なる子たちがいればいるほど化学反応が起きやすくなりますので、それを期待しながらさまざまな入試を実施しています。

入試種類についてもっと知りたい方はこちらをご覧ください。

インタビュー② 入学後の学び・探究とどうつながるか

認知型の学力と非認知型の智力を養う

――ポテンシャル入試と建学の精神とのかかわりについてもお話いただけますか?

中村:
本校の建学の精神は「機に応じて活動できる女性の育成」です。

建学の精神についてもっと知りたい方はこちらをご覧ください。

この実現のため、本校では、認知型の学力と、非認知型の智力をバランスよくつけることを目指しています。

そして、非認知型の智力を本校では5つに分けています。具体的には、以下の5つです。

1.地球規模で考え、足元から行動するチカラ
2.人と上手な関係を構築するチカラ
3.思考・判断して文字化するチカラ
4.考えて行動するチカラ
5.自らサイクルを回し続けるチカラ

こういった力をつけると最終的に「機に応じて活動できる」ようになると考えています。「ポテンシャル入試」はこれら5つのうち「3.思考・判断して文字化するチカラ」に関わるものです。

「認知型学力」と「非認知型智力」についてもっと知りたい方はこちらをご覧ください。

――なるほど、とても明確です。「3.思考・判断して文字化するチカラ」が姿勢として身に付いているお子さんであれば、入学後に非認知型の智力を構成する残りの4つも身についていくということでしょうか。

中村:
その通りです。「思考・判断して文字化するチカラ」の素地があればと思っています。

オリジナルテキストで問いの立て方から学べる

――入試と、入学後の探究的な学びのかかわりについてお話いただけますか?

中村:
ポテンシャル入試に限らず、本校の入試では物事を考察する機会を増やしています。ただ単に知っているか知らないかだけではなく、「なぜそうなのか」「どうしてそう思うのか」を聞くような問題が昔より増えています。なぜなら、それらは入学後の探究活動につながってくると考えているからです。

私たちは、「研究」と「探究」を明確に分けています。
探究は、自分で問いを立てるもの。つまり「なんでそうなんだろう」の「なんで」の部分がとても大切なので、入試でもそうした力を問うています。

探究活動は高校に入ってからが主となりますが、中学ではその素地を少しずつ作っていきます。研究発表もしますが、(そうした活動をしながら)だんだん、問いを立てる練習もし、中学3年生になるとかなり探究活動が増えるようにしています。

――生徒さんが自分で問いをたてられるようにすることはとても難しいと聞いています。独自の取り組みがありましたらお教えください。

中村:
いきなり「問いをたててみよう」と言われてもできるわけではありませんので、本校ではオリジナルのテキストを作って、まずはその中で色々なケーススタディを少しずつしながら、問いの立て方の訓練していくようにしています。

最初のうちは、立てては見たけれど先に進まない「問い」ももちろんあります。そういう失敗もしながら、テキストを通じて練習をしていく感じですね。

――探究に取り組んでおられる学校さんの中で、オリジナルのテキストまで作っておられる学校さんはそう多くはないと思います。それは何人ぐらいの先生で作っておられるのですか?

中村:
本校には「探究活動検討委員会」という委員会があり、そこに所属する6~7名の先生 ――若い先生方が活躍しています―― が中心になってカリキュラムを検討したり、オリジナルテキストを作ったりしています。テキストは昨年(2021年)から使用し始めましたが、準備はその3年ほど前から始めていました。

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