東京都市大学等々力中学校・高等学校 原田 豊 校長先生のお話・穴埋め式まとめノート

この記事は、文化放送PodcastQRで毎週月曜日に配信されている「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」の内容を、確認クイズ付きでWeb再録したものです。

配信内容を書き起こすとともに、その一部を「穴埋め(ブルダウン式の三択)」クイズにしております。

番組を聴きながら穴埋めを完成させて、楽しみながら学校への理解を深めていただければ幸いです。

今回お届けするのは、
東京都市大学等々力中学校・高等学校 (東京都 世田谷区)の校長、原田 豊先生のお話です。

番組の聴取は下記より↓↓

【大切なお願い】

※このWeb再録は、「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」をより楽しんでいただくための取り組みとして、文化放送様の許諾をいただいて実施している特別企画です。

クイズを楽しんでいただいたあとは、ぜひページ末尾のアンケートフォームから、番組のご感想やリクエストなどをお送りください。

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Topics1:学校の概要

「本校の生徒にはそういう生徒は本当にひとりとしていない」

おおたとしまさ氏(以下、おおた):
それでは東京都市大学等々力中学校・高等学校の校長、原田 豊先生にお話をうかがっていきましょう。原田先生、よろしくお願いします


東京都市大学等々力中学校・高等学校
原田 豊 校長先生(以下、原田):

よろしくお願いします。

おおた:
(中略)まず学校がどんなところにあるのか、最寄りの駅や周りの環境を教えていただけますでしょうか。

原田:
東急の大井町線、品川区の大井町駅と川崎の溝の口駅を結んでいる線なのですが、等々力という駅から徒歩で10分ほどの閑静な住宅街の中に(あります)。等々力渓谷という渓谷があって、シーズンには桜の花が非常にきれいで、いわゆる癒しのスポットとして有名な場所です。そんなところに(あります)。

おおた:
世田谷区になるんですよね。

原田:
そうでそうです、世田谷区です。

おおた:
世田谷区の中で都心にも当然近いんですけれども、ちょっとあのエリア、大井町線のエリアは少し昭和の風景、なごりがあるというかそんなエリアですよね。

原田:
そうですね。

おおた:
商店街もちょっと昭和っぽい雰囲気が残っている、のどかな住宅街。そんなところに位置している学校かと思います。そういった環境にある東京都市大学等々力さんですが、学校の中の様子についてもうかがっていければと思うのですが、最近の学校のご様子はいかがですか?

原田:
最近ということでいえば、5月31日に高校生の体育祭が実施されました。学年やクラスを超えて4色の色にわかれて実施されます。

おおた:
体育祭は高校と中学とをわけてそれぞれ行うのですか?

原田:
はい(中略)。その体育祭の、参加態度と言うのでしょうか、それが非常に自慢のひとつでもあるんです。

競技に真剣に取り組むというのは当たり前といえば当たり前なのかもしれませんが、競技だけでなく、とにかく応援合戦をやらせてもみんなが集まって練習をして質の高い応援合戦をやるし、それから観戦態度ですよね。

こう言ってはなんですが、高校生になると、こんなのかったるいとか、そういう生徒がまあ2、3いてもおかしくない(です)。私の高校時代を振り返ってもないことはなかったと思うのですが、本校の生徒にはそういう生徒は本当にひとりとしていない。目の前の競技に夢中になって、目の前の応援合戦に夢中になって、みんなで楽しむすべを知っているというのでしょうか。それは、正直それを見ているだけでちょっとした感動を覚えるぐらいです。

おおた:
しらけた感じの生徒が2、3いるでしょうという、私もそう思うのですが、それが一人としていないというのはなんでそうなっていると先生は思われます?

原田:
それがほんとに…不思議と私が言うのはいけないのかもしれませんが、立派だなというふうに思っているんですね。まあ、あえて理屈をつければですよ、私たちはメタ認知能力を高めて行くことが私たちの教育目標のひとつ、大きな柱なんですね。体育祭だけではなく、色々な行事に対してきちんと意義を見いだしてそのことをちゃんと自分でとらえてその場にふさわしい行動をとれるようにしよう、そういう教育をしているつもりで、そういったところは、実際にこういう行事の一つひとつに(出ているの)ではないかなと。だとすると嬉しいことだなと。

おおた:
校長先生も不思議に思うぐらいにそういう理想的な雰囲気ができあがってきているということですね。

原田:
閉会式なんかやるでしょう?すると、全部の高校生で600人ぐらいいるわけですよ。そうすると、(通常は)必ず「静かにしろ」とか言うものですよね。でも、閉会式の時もちょっと生徒がそれでは始めますと言うと自然としーんとしていくんです。

おおた:
へえ…

原田:
たくさんの例があるわけではないと思っているんですよね。

おおた:
でも、そこまでできすぎていると逆に不安になったりしませんか?先生。

原田:
(中略)

おおた:
先生からご覧になるとこれは本物だぞと感じられるから気持ちいいということかなと思いますが。

Topics2:沿革

「日本一自習する生徒の多い学校だと私は思っているんです」

おおた:
今、学校の校風が伝わってきたと思うのですが、そういった学校の姿がどのような歴史の中でつくられてきたのか、創立者の人となりであるとか、建学の精神であるとか、学校の歩みをうかがっていきたいと思うのですがいかがでしょうか。

原田:
はいわかりました。本校の前身は昭和14年(1939年)、東急グループの創始者である五島慶太先生がこの地におつくりになったのがスタートなんです。最初は東横女子商業学校という女子校として(スタートしました)。五島慶太先生が鉄道を中核として色々な事業に着手し、ひとつのグループを形成した大きな実業家だと思うのですが、特に、人間は社会的な動物であるからして私を滅して公に奉ずることが大事だということを昭和14年からずっとおっしゃり続けてきたわけです。 

非常に大きな転機となったのは、ちょっとあいだをはしょってしまいますけど、2010年(平成22年)の4月です。それまでの女子校の歴史に幕を閉じて共学の学校として再スタートしたわけです。その時に、とにかく新しい学校を一からつくるというそういう大きな事業に着手をすると。これはもう、なかなかできない経験ですよね。その時に私たちは五島先生の社会貢献――私を滅して公に奉ずるいう社会貢献の精神をきちんと受け継いで、それを少し、今流に(して)ノブレス・オブリージュとグローバルリーダーを建学の精神と定めて再出発をしました。

その時に、(中略)メタ認知能力を高める・育成すると。

おおた:
先生、メタ認知能力とはどのようなことなのかちょっとご説明いただいてもいいですか?

原田:
わかりやすく言えば、認知している自分をコントロールする、自分自身を自覚するというのでしょうか、認知する自分をちゃんとわかると。ソクラテスの言った無知の知の自覚ですとか、セルフコントロール能力というのでしょうか、自分で自分の足りないところをきちんと自覚しながら、それを補えるように自分を律していく、そういう能力と考えて指導(しています)。自律能力を高めて行くと。

おおた:
自分をメタなところから客観視して――メタとは上位の、次元が上がるということかと思いますが――そういうところから客観視して、相対化された自分に対してコントロールをきかせる、それが自立であるよという概念であるかなと理解したのですが、だいたい合っていますでしょうか。

原田:
そういうことだと私は思っています。

おおた:
ありがとうございます。その取り組みが先ほどの体育祭の雰囲気なんかにも現れているんじゃないかなと。2010年からということですから、12~13年という中でそういう文化がねらった通りに育ってきているということを先生も実感としてお感じになっているのかなと思いますが。

原田:
メタ認知ということで言うと、(本校は)日本一自習する生徒の多い学校だと私は思っているんです。

おおた:
ああ、そうなんですか。

原田:
本校には等々力リテラシーセンターという、3階建ての自習教室棟があるんです。そこは部活が終わってからでも自習できるように、夜の8時、高校3年生は夜の9時まで開けておいて、部活が終わってからでもちょっと(自習をして)帰れるようにしています。 

そこの、自習に参加する生徒の数が(高い)。ついたてで仕切られたブースタイプの自習席が約160席あるのですが、毎日ほぼ満杯なんです。試験前になると3階の300人ぐらい入るホールも開放して、200人ぐらいの生徒が静謐(せいひつ)というのでしょうか、静寂の中でずっと集中しているような感じで自習をしています。これは多くの学校が見学に来られて――1週間前も都内のある有名な進学校が自習室の様子を見たいということで見学に来られて――やはり感動して帰られました。

おおた:
ああ、そうですか。面白いですね、自習室が名物になるというのは、それはまた一つのユニークな文化ですよね。

原田:
やはり、何かやるにしても教えることには限りがあるわけですよね。同じような教科書を使っていますし問題集だって本屋に行けば誰でも買えるような本ですから。(重要なのは)自分で勉強をしようと思うマインドがあるかないか、そこしかないと思うんですよ、私はね。そういうメタ認知能力、自学自習力。本校では非常に身についている生徒がそういう意味でも多いんじゃないかと私は解釈しています。

おおた:
それがまたその、自分で勉強しようという気持ちがあるのと同時に、その場所としてこの学校の自習室を徹底的に利用するぞという、この場所に対する愛着があり、周りも頑張っていて静謐な雰囲気の中に自分もひたりきって学ぶんだと。そういうひとつの空間というか宇宙、そんなものがちょっと目に浮かびますね。

原田:
おっしゃるとおりです。環境というのはは大事で、普段使っている教室を放課後、自習室に開放するから使っていけよというのか、普段の生活とはちょっとかけ離れたところに、そこに行くとなんとなくちょっと雰囲気が変わるというそういう場所があるのとないのとでは、私は決定的に違うと思うんですね。

おおた:
なるほど。

原田:
作りこみ、施設、設備の力というのをばかにしないほうがいいと

おおた:
本当ですね。場が持つ力、空間が持つ力というのもあると思いますし。リテラシーセンターが持っているある種の波動というか生徒を感化する力というのがそこにきっと。等々力渓谷もパワースポットとよく言われますが、新たなパワースポットがそこにあると(笑)。

原田:
そうですね、おっしゃるとおりです(笑)。

おおた:
ということかもしれませんね。もうひとつ、今のお話を聞いていて思うのは、自習しなさい、静かにしなさいという言葉では伝わらないものを場が伝えてくれているというのはものすごい財産ですよね。

原田:
そうですね。自学自習が大事というのは生徒も親も大人もわかっているんですよね。だけどやっぱり、慣れない電車通学が中学生で始まったり、部活で一生懸命体を動かせば、へとへとになって。そこで家に帰ってごはん食べちゃったらもうバタンキューですよね。

おおた:
それはそうです。

原田
当たり前ですよね。それを「お前は意志が弱い」とか、「勉強と部活の両立をしなきゃだめじゃないか」とか無茶を(言ってもしかたない)。そこから出発しないと。勉強しなければ困るから、では学校ができるのはどういうことかというと、モチベーションを一回家に帰って下げる前に30分でも1時間でも集中してやれば課題は終わっちゃうよと。そうやって家に帰ればあとは(休んでも)いいじゃないかと。

おおた:
そのほうが結局は時間の効率もいい。休み時間もとれて。

原田:
そうです、そうです。

おおた:
そういう自律的なサイクルが、「場」の力も借りながら、言葉じゃないところで生徒さんたちに浸透していくという、それがひとつの学校文化になっているんだなということが今、よく伝わってきました。

Topics3:保護者様へのアドバイス

「〇〇だけだと、やりかたとして野蛮だと思うんです」

おおた:
そういった豊かな学校文化が育っている東京都市大学等々力さんなわけですが、その教育のエッセンスをなにか一般のご家庭でも取り入れるヒント、あるいは子育てのアドバイスのようなものをいただければと思うのですがいかがでしょうか。

原田:
これはアドバイスになるのかよくわからないのですが、子どもに大事なことを身に付けさせようと思ったら、やはり大人が苦労しないと…

おおた:
なるほど、大人が苦労。

原田:
ということを大人はもう少しちゃんと考えたほうがいいと思っていて。たとえば、最近の若い子は本を読まないとか嘆かわしいとか最近の若者はダメだとかそういうふうに言っているだけだと、やりかたとして野蛮だと思うんです。

おおた:
(笑)野蛮。

原田:
さっきの自学自習もそうです。自学自習をしろとただ言っているだけではそれもあまり賢いやり方ではない。私は、なんでも身に付けさせたい資質、これを身に付けさせるという目標を作ったら、きちんとしたやり方、(1)を考えてあげることが、少なくとも教師の仕事ではあります。

<確認クイズ>
(1)に当てはまる言葉の組み合わせは何でしょう?

テスト

(1)を作ったらその(1)がうまくまわるような環境をなるべく整備してあげる。(1)と環境と、そして、最後は――これは五島慶太先生のよく使われた言葉ですが――「熱誠」という言葉があるんですよ。

おおた:
ユニークな言葉ですね。

原田:
どんなことをやるのでも、大人が諦めないで情熱をもってやり続ける、言い続けると。そういうことがないと大事なことは子どもの身についていかないのではないかなと。そのことは強く感じるし、私はやはり、教師としても自戒というのでしょうか、(1)と環境の整備と最後は熱誠、これらは教師の自戒としてもっていたい要素というふうに思っています。親の仕事も、結局は(この3つ)かなと思っています。

おおた:
そうですね。安心できる家庭があって、そこに親の熱誠、ちょっと新しい言葉を覚えましたけれども、熱のこもった誠意と、そういうニュアンスなのでしょうか、あきらめず、親が本気で子どもと向き合って支えて…という、そういう言葉なのかなと思いましたけれども。

その熱誠をできるだけ親も心に灯しながら子どもに接する。その本気度合いというのでしょうか、それを子どもも見抜くんですよね。口で言っているだけだな、うちのお父さんお母さんはと、口先だけで言っていると見抜かれてしまう。でも(1)と環境を整えて熱意をもって子どもに接していると、ここまでやってくれているんだったら自分もちゃんとしなくちゃな、親は親の役割をここまで一生懸命やっているんだから、自分は自分の役割をちゃんとやらなきゃなという、そういうメタ認知ができるようになっていくのかもしれないですね。

原田:
そう思います、私は。

おおた:
校長室訪問、今回は東京都市大学等々力中学校・高等学校 の校長、原田豊生生にお話をうかがいました。原田先生、ありがとうございました。

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