順天中学校・高等学校 長塚 篤夫 校長先生のお話・穴埋め式まとめノート

この記事は、文化放送PodcastQRで毎週月曜日に配信されている「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」の内容を、確認クイズ付きでWeb再録したものです。

配信内容を書き起こすとともに、その一部を「穴埋め(ブルダウン式の三択)」クイズにしております。

番組を聴きながら穴埋めを完成させて、楽しみながら学校への理解を深めていただければ幸いです。

今回お届けするのは、
順天中学校・高等学校 (東京都 北区)の校長、長塚 篤夫先生のお話です。

番組の聴取は下記より↓↓

【大切なお願い】

※このWeb再録は、「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」をより楽しんでいただくための取り組みとして、文化放送様の許諾をいただいて実施している特別企画です。

クイズを楽しんでいただいたあとは、ぜひページ末尾のアンケートフォームから、番組のご感想やリクエストなどをお送りください。

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Topics1:学校の概要

探究教育、国際教育、そしてロールモデルも

おおたとしまさ氏(以下、おおた):
それでは順天中学校・高等学校の校長、長塚 篤夫先生にお話をうかがっていきましょう。長塚先生、よろしくお願いします


順天中学校・高等学校
長塚 篤夫 校長先生(以下、長塚):

よろしくお願いします。

おおた:
(中略)まず学校がどんなところにあるのか、最寄りの駅や周りの環境について教えていただけますでしょうか。

長塚:
本校は東京都の北区にあるのですが、文字通り「北区」ですから23区の中でも一番北部にありまして、隣は埼玉県に接しています。最寄り駅でいいますと京浜東北線、あるいは地下鉄南北線の王子駅、そこから3~4分で学校に来ることができます。

おおた:
飛鳥山があるところですよね。

長塚:
そのとおりです。校舎から上にあがりますと、飛鳥山公園とか――桜の名所で知られていますけど――それから目の前に王子神社の緑がずっと広がってつながっているように見えまして、大変見晴らしの良い、緑が多い環境です。

おおた:
そういった緑豊かな環境にある順天中高さんですが、最近の学校のご様子はいかがでしょうか。

長塚:
最近のことで言えば、ちょうど、海外から来ていた留学生だちが帰国したばかりです。たとえば、来ていた国はノルウェーとかオランダ、ドイツ、台湾の子どもたちでしたけれども、ちょうど今、入れ替わる時期なんですね。学期の始まりが違いますから。また、逆に夏休みになりますと本校の生徒たちが色々な国に、たとえばオーストラリアとかニュージーランドとかカナダとかマレーシアとか色々な方面に研修旅行に出かけたり、あるいは1年間の留学に、長期の海外の滞在に出かけていく時期に今、なっている、そんなところでしょうか。

おおた:
色々なところが。ノルウェーオランダ、ドイツ、台湾と。こんなところからもお客さんがいらっしゃって。生徒さんと交流をするという、そういう国際交流が盛んな学校なんですね。

長塚:
そうなんですよね。国際教育を非常に大事にしている、教育の目標にもそれを掲げているぐらいなので、それもあるかもしれませんが、コロナの間でもずいぶん海外から日本に来たいという留学生が多かったですね。

おおた:
そうですか、それは貴重な機会ですね。

長塚:
また、最近、学校の様子で言いますと、中1から高2まで生徒たちが本校の卒業生のある映像記録にみんなで見入っていたという、大変印象的なことがありました。

おおた:
映像記録。

長塚:
この卒業生は秋田大学の医学部に進んだ先輩なのですが、大学2年生の時に「アフリカのザンビアのある村に診療所を作りたい」と、診療所がないから自分たちで作ってあげようではないかというプロジェクトを立ち上げた先輩がいて。後輩の医学部に行った先輩たちと一緒になって、作っちゃったんですよ。3年ぐらいかかったんでしょうかね。ザンビア風のお好み焼きを売ったりクラウドファンディングをしたりして集めた資金で診療所を作ったのですが、大学5年の時に、なかなかそれが進まないので休学して現地入りしてなんとかやりとげた、そんな映像なのですが。それを見ている後輩たちはとても目を輝かせていましたね。

おおた:
その先輩は医学部に在籍中にザンビアに…

長塚:
そうです。

おおた:
学生で、それはすごいですね!

長塚:
なかなかですよね。この学生は日本学生支援機構からも表彰されたりして、学生としてよくやっているねというふうに表彰されたり、あるいは最近、今年の高校の家庭科の教科書にも彼の記事が紹介されたりしていましたね。

おおた:
ああ、そんなに有名になられているかたなんですね。

長塚:
でもまだ25歳ですよ。今年医師の免許を取得して始めたばかりですけれど。面白いのは、大事なのは、休学して現地で診療所を作っている間にもワクチン接種とそれぞれの国の政府への信頼度の関係をヨーロッパの国々の中の状況を調べて、その論文がLancet (THE LANCET) に載ったんですよ。これは学生としては珍しいらしいのですが。

ですから、ただボランティアをするとか活動するだけでなく、研究する・探究する。本校の探究教育とか国際教育とか、生徒たちもよくやっていますので。先輩のそういったものを見ながら、自分たちの日ごろの活動と重ねてこういうことをやったらいいな、やれたらいいなと思っているように見えました。

おおた:
それは最高のロールモデルですね!

長塚:
そういえばそうですね、身近な。

おおた:
自分たちが普段、順天で学んでいる探究活動や国際教育がどこにつながっているのかということがものすごく具体的にわかりますものね。

長塚:そうなんだと思います。だから思わず目が輝いていたなと、そう思いました。

おおた:
ああ、それはいい機会でしたね!

長塚:
まあ、そうはいっても普段の学校生活の様子は創意工夫をするとか社会的な貢献活動をするということが大事だとは思っていますけれども、それでも、日頃はそんな大きなことばかり考えているわけではないから(笑)。

おおた:
それはそうです(笑)

長塚:
今年の体育祭は「私は最強」というのがテーマでね。これは音楽のひとつのテーマですよね。曲の…

おおた:
ああ、そうなんですか?

長塚:
「私は最強」というテーマ音楽のもとで、高校生が体育祭の最初に盛り上げる応援団とか三色でやるんですが、その三色が一緒になって、700名の高校の生徒たちが一緒になって「私は最強」というダンスパフォーマンスを全員でやっていましたね。

おおた:
それはすごいですね。

長塚:
毎年、毎年、最高のものを作りたいという創意工夫をする、そういう気持ちとか、みんなで一緒になってやりあげようという気持ち、実はそういうことが日頃行われているわけであって、そういうことが大きなことにもつながっていく素地を作っているのではないかと思います。

おおた:
素晴らしい。いきなりそんな、世のため、世界のためってなかなか中高生ではできないですが、自分たちの身の回りのことや仲間のことを思って協力したりとやっていく中で、それが素地となってその力をいざ地域社会に向けてみよう、世界に向けてみようというふうになった時に、土台になるようなものが日々の生活の中で身についているということですよね。

長塚:
そうですね。そう思います。

おおた:
ありがとうございます。生徒さん達の様子も伝わってきました。

Topics2:沿革

創意工夫し、仲間と協力する。それは人間の楽しい本質

おおた:
そういった創意工夫に満ちた学校だということが伝わってきましたが、そもそもこの学校はどんな目的で作られたのか、歴史的な背景をうかがっていきたいのですがいかがでしょうか。

長塚:
創立者は福田理軒(ふくだ・りけん)という和算の研究者、和算は今でいう数学ですけれども、天保5年(1834年)に大阪に作った「順天堂塾」が始まりです。数えでいいますと今年は190周年目に入りますので…

おおた:
超伝統校ですね!

長塚:
長いですね(笑)。建学の精神が校名にもつながっている「順天求合(じゅんてんきゅうごう)」。自然の摂理に従って真理を探究するという、最近でいえば「探究精神」そのものにつながっているのだろうと思います。

おおた:
順天というのは天に順って(したがって)真理を探究すると。

長塚:
福田理軒先生が「数は宇宙にありて、術(学術)は人にあり」ということもおっしゃっていました。自然の摂理はあるけれども発展するのは、それを使いこなすのは人だよというような意味でしょうね。その和算の研究から始まって、天文学とかあるいは黒船の測量をしたりとか、暦の改暦をしたりとか、そんなことでも活躍して学校の発展につながっているという状況でしょうかね。

おおた:
純粋な和式の数学者だったわけですね、きっとね。

長塚:
最初はね。ところが、西洋数学がちょうど入る頃でしたから。和算と西洋数学をつないだ役割をしたみたいです。息子さんは微積分を紹介する最初の本を書いたりとか、西洋数学をむしろ紹介する本を相当数つくりあげて紹介して世の中に広めていった、そういう役割を果たしていましたね。

おおた:
西洋からの学問が幕末からたくさん入って来る時に、それを日本に広めていったというすごく重要な役割を果たした親子だったわけですね。

長塚:
そう思います。創立した34年後は明治維新ですから、本当にそのちょうど境目にいたわけですよね。大阪にできたんですけれども明治になってすぐに東京の神田に移転したんです。神田に移転してからは旧制中学校、いまでいうと高校に当たりますけれども、男子校でした。戦後、少ししてこちらの王子の方に移転してきた。で、戦後少しの間、女子校でした。

おおた:
ああ、そんな歴史があるんですか!面白い。

長塚:
でも、もともと男子の学校でしたから、1990年(平成2年)に共学にして、男女が両方通える学校にしたと。

おおた:
戦前は中学校といえば当然男の子しか中学校に行けないから男子校だったけれども、戦後になってから一時期女子校であるという経験もされて、1990年に共学化と。ユニークな歴史ですね。

長塚:
1995年にはもともと中学がありましたので(中学を開校しました)。2000年に国際社会で活躍する人を育成するということを教育目標にしたのですが、もともと国際教育活動をしていたというか、生徒を海外に派遣する制度を1964年、前の東京オリンピックがあった年から始めているんですね。この年からしか実は日本人は戦後、自由に海外に行けなかったんです。オリンピックの後、10月以降ですよね。(当時は)確か1万人ぐらいしか行っていないはずです。今は何千万人――コロナで行けなかったということはありましたけれども――今では当たり前のように行けるようになりましたけれども、国際教育のずっと長い歴史があって今に至っているということなんです。

そもそも日本の明治期の開国あるいは戦後の第二の開国、開国ってまさにグローバルなんですよね。今もまさにグローバル化が日本というより世界中で進んでしまっているわけですが。ちょうど教育界の変化も2000年頃からあったと思うんです。OECDが世界の国々の子ども達の学力調査としてPISAを始めました。3年おきに。知識の量を測るというものでないわけですけれども、長らく日本は学習指導要領で詰込みかゆとりかと10年ぐらい揺れていましたけれども、2000年ぐらいからはそれが変わって、資質・能力ベースというのでしょうか、コンピテンシーベースに。PISAテストで求めているリテラシーのようなものが世界中で教育の世界で必要だというふうになってきましたので、本校でも資質・能力に焦点をあわせた教育に変わってきています。創造的な学力とか国際対話力とか人間関係力とか3つにまとめているのですが。

人生100年時代、仕事がどんどん変わっていく世の中で、そういう中でも必要な資質・能力を子ども達に身につけてもらうことは大事じゃないかと思うんですよね。ちょうど10年前になると思うのですが、2013年9月にイギリスのマイケル・オズボーン、オックスフォード大学の准教授だったかたが「雇用の未来」で、近い将来、仕事の半分がコンピュータに置き換えられてしまいますと(発表しました)。アメリカの700余りの仕事を分析して、47%の部分がコンピュータに置き換えられると。ずいぶん話題を呼びました。

最近は生成AIとかChat GPTとか出てきて、この割合がもっと高まるのではないかと、その頃はあまり信じていなかった方も言っているようですが。それでも残る仕事、つまりコンピュータに置き換えられない仕事には、マイケル・オズボーン博士が言うには、共通する二つの資質・能力があると。それは創造性と社会性だと。この2つにフォーカスした教育がこれから大事だと私どもも10年前から特に思っていたわけですね。

考えてみますと、AIロボット君がどんなに優れたものになっても、新しいものを創り出すことはできませんし、人間のように思いやりを持って接する、介護をするなんてことはできないわけですから、創意工夫をするとか仲間と協力するという教育が大事だと、冒頭で学校の様子をお伝えしましたけれども、だからそういうことを日頃から大事にしたいと思っているわけです。

おおた:
子どもなんかはむしろ自由にさせているとそういう力を発揮しますよね。それが人間が持っている本能的なというか。

長塚:そうですね。本質。新しいものを作りたいとか仲間と一緒に何かをやりたいとか、これは人間しかできないし人間の楽しい本質なんですよね。

おおた:
本当ですよね。人間だからこそ不完全で、だからこそ間違えて、間違えた中から瓢箪(ひょうたん)から駒ではないですが「こんなものできちゃった」ということがあるのも人間のかわいらしさだし。

長塚:
そうですよね、その通りだと思います。

おおた:
そういう機会を、特に中高生のうちに、いっぱい失敗して転びながら、でもこんなもの拾っちゃったみたいなそういう経験がこれからますます大事ですよね。計算づくではなくて。計算づくではできないことができてしまうという。

長塚:
そのとおりですね。

おおた:
なるほど、ありがとうございます。

Topics3:保護者様へのアドバイス

学校の利用価値とは。そして学校選びのポイントは

おおた:
そういった教育を行っている順天中高さんですが、その教育のエッセンスを一般のご家庭でも取り入れるヒント、子育てのアドバイスのようなものをいただければと思うのですがいかがでしょうか。

長塚:
子どもはよく親の鑑(かがみ)だとか、子どもは親の言うことはしないけれどしていることはするなんてよく言われますよね。IB(インターナショナルバカロレア)にはラーナープロファイル(=学習者像)、こういう人になろうねというようなものが10個あるんですけれども、一番上が「探究する人」。あるいは「考える人」「思いやりのある人」そういう人になろうじゃないかという呼びかけのような、学習者に求める資質(が示されています)。

これ、実は面白いことに、生徒あるいは子どもさんに向けて言っているだけではなくて、先生とか親御さんに向けて、つまり、周りの大人もそうあって欲しいと。そうでないとお子さんはそうならないよということを言っているわけですね。

おおた:
ああ、なるほど。

長塚:
たとえば先生が生徒たちに向かって「これは面白いから探究をしよう」とか「探究は楽しいよ」なんて言っても、実は先生自身が探究を楽しんでいないと、たとえば教育という活動を通してそれをどういうふうにしたらより成果のあるものになるかという探究としてやっていないと、先生自身がそれに楽しく取り組んでいなければ、子ども達・生徒たちが「探究が楽しい」なんて思えるわけはないので。探求心を伝えること自体が茶番になっちゃいますよね。

おおた:
本当ですよね。

長塚:
親御さんも同じで。たとえば「思いやりのある子になってほしい」と思う親御さんは多いわけですが、ご自身が思いやりのある行動をしているかどうか、そうしていない限りはなかなかお子さんはそうならないわけだろうと思うんですよね。そのへんが大事なんだろうと思います。

ただ、人間パーフェクトではありませんから、そこで学校の良さというか、色々な大人、生徒、先生がいる、友達がいる、先輩がいるという中で色々な刺激を受けるチャンスが学校では広がるわけです。

おおた:
本当ですね。

長塚:
自分ひとりで親御さんがお子さんを見ているというよりは、学校というさまざまな人たちがいるところで育つチャンスがある、(1)がそれぞれどう違うかも大事だと思うのですが、(それだけではなく)お子さんにこうなってほしいなという想いがあるとすれば、それを重ね合わせて学校選びをする、(1)もそれぞれ違いますから。それが大事になって来るのではと思います。

<確認クイズ>
(1)に当てはまる言葉の組み合わせは何でしょう?

テスト

おおた:
本当におっしゃるとおりですよね。まず、口で子どもにどうあれと要求するのではなくて、自らがそのロールモデルになるということが大事なんだけれども、でも人間そんな誰もがそんな完璧ではないので、みんなで色々な姿を子どもに見せましょう、色々な刺激をもってもらいましょう、その時に学校というのはすごくよくできた利用価値の高い場所ですよと。

長塚:
そうですね。

おおた:
特に私学においてはそれぞれの学校が独特の文化を持っていて、それを家庭の文化、あるいは親御さんの価値観なんかと照らし合わせながら、ぴったり合うところでもいいし、補い合う関係でもいいのかもしれないし、そういう観点で子どもに色々な価値観を見せる・振る舞いのあり方を見せるという観点で、中学受験をするのであれば学校を選ぶ、そういう観点が重要なのではないかというアドバイスですね。ありがとうございます。


校長室訪問、今回は順天中学校・高等学校の校長、長塚 篤夫生生にお話をうかがいました。長塚先生、ありがとうございました。

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