実は理系しばりなし!ポテンシャルを見る入試 ~ 探究型入試紹介③ 文京学院大学女子中学校 ~

例年以上の激化が予想されている2023年度中学入試。いよいよ各所で出願が始まる中、6年生保護者様は出願校の最終検討と調整を進めていらっしゃることと思います。

そのご参考のひとつとしていただけるよう、期間限定企画「探究型入試紹介」の連載を始めました。

入試広報担当の先生や探究を担当されている先生方に直接お話をうかがい、入試の特長や出題の意図、事前準備があまりできていなくても受験できる…?などの気になるポイントをうかがうとともに、その入試が入学後の学びとどのような関係があるのかについてもお話を聞いていきます。

第3回目となる今回は、文京学院大学女子中学校(東京都文京区)です。2023年2月1日(水) PMに実施される「探究プレゼン型入試」についてお聞きしました。なお、文末には試験の概要もまとめておきましたので、最後までお読みいただければ幸いです。

このシリーズの連載記事は、年末年始の間は当サイト「オンライン合同学校説明会」に掲載し、年明けの2023年1月6日(金)をめどに新サイトへと移行します。新サイトの掲載アドレス等が決まりましたら、こちらのページにリンクを残し、新サイトへの誘導リンクを設置いたします。

インタビュー① 探究プレゼン型入試とその成果

高2になった1期生さんが活躍中

――「探究プレゼン型入試」はいつ頃から実施されているのでしょうか?

文京学院大学女子中学校 高等学校 
入試広報ご担当の先生(以下、文京学院):
開始してからもう6年になります。第1回の入試を受けて入学した生徒は現在、高校2年生になっていますよ。

――もうそんなに経っているんですね。どのようなお子さんが受験されたのですか?

文京学院:
当時は「科学実験プレゼン型入試」という名称だったこともあり、やはり理科が好き、実験が好きというお子さんが多く受験されました。本校としても、SSH(スーパーサイエンスハイスクール:2012~2017年)につながる生徒を求めてこの入試制度をスタートしたという経緯がありました。

――現在は高校2年生になっている1期生さんたちは入学後、どのように成長されましたか?

文京学院:
本校では、高校から理数キャリアコースに進んだ生徒は3年間かけてひとり一つの課題、テーマを研究します。高校1年生である程度(テーマを)まとめて、2年生では学外のコンテストなどでそれらを披露します。

1期生はまさに今年、この「学外のコンテスト等で研究の成果を披露する」時期となり、さまざまな成果を挙げています。

主なところで申しますと、たとえば今月(2022年12月)には「サイエンスキャッスル2022 関東大会」という中高生の多様な研究が集まるアジア最大級の学会があり、1期生のひとりが審査員の慶應義塾大学薬学部教授 熊谷直哉博士が最も良いと認めた「慶應義塾大学薬学部賞」を受賞することができました

また、高校生・高専生が科学技術の自由研究の成果を競うコンテスト「JSEC2022(第20回高校生・高専生科学技術チャレンジ)」でも1期生のチームがベスト16に選ばれ、対面のプレゼンを経てベスト8にも選ばれました。彼女たちは来年アメリカに行き、日本代表としてプレゼンをする予定です。

インタビュー② 入学後の学びとどうつながるか

「世界一授業を受けたい」先生が毎週指導

――それは素晴らしいですね!ところで理系の研究、しかも一人ひとつのテーマを持つとなると指導が大変なのではという点が気がかりです。外部との連携など、指導体制の特色についてお聞かせいただけますか?

文京学院:
併設の文京学院大学から樋口 桂 (保健医療技術学部)先生がほぼ毎週指導にいらしてくださるのが大きな特長として挙げられると思います。「世界一受けたい授業」「チコちゃんに叱られる!」などのテレビ番組にもよく出演されているのでご存じの方もおられるかもしれませんが、樋口先生は本校がSSHを設置した頃から指導してくださっています。

生徒が自分で指導者を探してくることもあるんですよ。最近では――これは探究プレゼン型入試で入学した生徒ではないのですが――ピザの定理(筆者注:円板をある方法で切り分けると、2つの部分の面積を等しくすることができるという幾何学の定理)をテーマに選んだ生徒が、アメリカに専門家がいるらしいと自分で調べてきて、メールで連絡をとって個人指導をしていただいていました。

外部との交流で得る刺激も大きい

――探究プレゼン型入試で入学した生徒さんではなくともそんなふうに積極的な姿勢を持つまでに成長されるのは素晴らしいと思います。

文京学院:
大会などで外に出て他の学校の生徒さんと接する機会が多いので、そこで刺激を受けてそんなふうに育つという部分も大きいと思います。

その意味では、2013年から教育提携している「タイ王国プリンセスチュラポーン科学高校ペッチャブリ校」から得るものも多いですね。毎年4月にタイの生徒が約1週間滞在し、本校からは選抜された高校2年生が1月頃にタイの学校で1週間を過ごすプログラムを実施しています。

実はこの2年間は新型コロナウイルスの関係で実際に行き来することができず、オンライン開催となってしまいましたが、これはこれで、選抜された生徒だけではなく全生徒が参加できましたので、より多くの生徒が刺激を受けることになりました。

理系は「研究職につく」ことを想定

文京学院:
生徒が卒業し、学校に戻ってきて口々に話してくれるのは「大学生活で何も困ることがない」ということです。理系の思考方法や、仮説をたて証明していく道筋を高校生活の中でしっかり身につけているメリットですね。

理数キャリアコースに進学する生徒の場合、大半は大学がゴールではありません。大学を卒業したら大学院に、そしてその後は研究職に…とキャリアが続いていきますので、本校としても、理系の指導目標は「研究職につく」ことを前提に考えていますし、卒業生の追跡調査も行っています。

科学教育についてもっと知りたい方はこちらをご覧ください。

入試時も入学後も「理系しばり」なし

――ところで「科学実験プレゼン型入試」から「探究プレゼン型入試」に名称が変わったというお話がありましたが、これはなぜでしょうか。理系色を弱めたということですか?

文京学院:
はい。本校は高校から3つのコースに分かれるのですが、その1つである「国際教養コース」にも探究の授業があります。答えがひとつとは限らない問題に取り組む必要があるのは理系も文系も同じですので、入試の時点で理科が得意な生徒に絞る必要はないだろうと考え、一昨年から名称を変更しました。

――「探究プレゼン型入試」は今、理科が好きで得意というお子さん以外にも受験しやすいような出題になっているということでしょうか。

文京学院:
その通りです。

――そうなんですね!ところで、探究プレゼン型入試で問われる内容は、大学入試にもつながっていきそうですね。

文京学院:
そうですね。世の中そのものが大きく変化する中、これに対応する形で大学入試の仕組みも変わってきています。

総合型選抜の入試では、小論文として「資料分析型」――たとえば、2つぐらいの資料を示して「これらを考察してあなたなりの提言をしなさい」という問題や、「グラフから読み取れることを答えなさい」といった問題がよく出題されます。

これらは、本校の生徒であれば、文系であっても日頃から学んでいる内容をそのまま活用して解くことができるものですし、探究プレゼン型入試で問われることとも近いと思いますよ。

――ちなみに、探究プレゼン型入試で入学した場合、高校では必ず理系に進まなければならないなどの決まりはあるのでしょうか。

文京学院:
ありません。入学でいったんリセットし、あとは中学の3年間をかけてゆっくり、自分が何を学びたいのか、そのために高校ではどのコースが良いのかを考え、探し、備えていただきます。

中学と高校でのコース選択についてもっと知りたい方はこちらをご覧ください。

→ 次ページでは、入試出願を迷われている方へのメッセージや入試概要も